Lecture

UpDate/2016/3/2


 =MENU(2015)=

  1. 各務原という地名
  2. 月に地名をつけた日本人
  3. 十万年前の川の跡
  4. 日本人のルーツ
  5. 零戦と各務原
  6. 災害立国日本
  7. 各務原から展開する古代地名
  8. 私が巡った外国の地名
  9. あの世の地名
  10. 本美濃紙のお話し
  11. 「がんどばぼち」と木遣音頭
  12. 食・中山道・かかみがはら
  13. 第34回全国地名研究者大会
第4回定例講演
(平成27年10月17日日)


U.私が巡った外国の地名/ユーラシア大陸と地名
(愛知地名文化研究会副会長)奥田 昌男

*本ページは講演内容を参考に当編集部が作成したものです。


◆はじめに

今から 40 数年前、私は勤めていた建設会社を辞し、2 年間かけた世界一周旅行を実行した。 その後、約 30 年間、個人下請けの土木技師として海外建設事業(主に道路建設工事)に従事した。 私が仕事をした国は、日本を含めて 20 ヵ国になる。この間に私の出会ったり、印象に残った地名の語源を調べてみた。 但し、地名の語源には諸説があるので、予め断っておく。
奥田 昌男

◆ 世界旅行中に出会った地名

シベリア

タタール語で「湿原」の意。チンギス・ハーンの長男ジョチのジョチ・ウルス(遊牧政権)の流れを汲むシビル(シゼルとも)・ハ ン国にも由来する。“Civil War”とは、ロシアに雇われたコサックがシビル・ハン国を征服した時の戦い(1598)。

ナホトカ

ロシア語で「掘り出し物」、「発見」の意。

ウラジオストク

東方を支配する町(ヴラジ−=支配する+ヴォストーク=東)。 ユル・ブリンナー(国籍=スイス)の出身地。

ハバロフスク

1649 年にこの地を訪れた探検家ハバロフに由来。「バロフの土地」の意。モスクワまで 9288 q。

モスクワ

市域を流れるモスクワ川に由来する都市名。フィン語で「湿地」の意も有力説。小惑星 787 番の名。

ポーランド

国名のポルスカ(Polska)は「ポラン族(Polanie)の国」或いは、 平原・農牧地を意味するポーレの英語化した Po-land が「平らな‐土地」の意など、諸説あり。

ワルシャワ

漁師ワルスと妻サワの名に由来する伝説がある。

ベルリン

名前の由来は「小熊」であるという説や、スラブ語で「湿地を意味する Berljina(ベルジーナ)に由来するという諸説あり。

ハノーバー

ハンザ同盟の一員として繁栄したハノーバーはライネ川岸に建設され、元の名前 Honovere は「高い岸」という意味。 ‐over=岸)。

フランクフルト

フランク族の渡った浅瀬。小惑星 204852 の名。

ミュンヘン

都市名の語源は修道士の村。修道僧を表す Münch の縮小語の語尾形(−chen)に由来する。
例)Brötchen、Mädchen、Würstchen

オールシュタット

Ohl は Tal(山間)。Stadt は町・市。オールシュタットはボブスレードルフと呼ばれ、 札幌オリンピックのボブスレー金メダリスト(W.ツィンマラー)の出身地。

オスロ

「尾根の下の牧草地」或いは「神の牧草地」の説有り。 旧称はクリスチャニア。デンマーク・ノルウェー王「クリスチャン 4 世」の名に因む。

ストックホルム

「丸太の小島」の意。小惑星 0552 番の名。

ヘルシンキ

現在のヴァンター川の旧称 Helsinga、或いは、中世の入植者がスウェーデンのヘルシングランドから来た事に由来するという諸 説あり。小惑星 1495 番の名。

ザルツブルク

塩の城、或いはザルツアッハ川沿いの要塞。小惑星6442 番の名。

インスブルック

12 世紀中頃につくられたイン川に架かる橋に由来。

マドリード

9 世紀後半、イスラム王が築いた要塞を Majerit(アラビ ア語)と呼んだ、或いは、ピクニックに来ていた子供達がクマに襲われて、山桃(Madrono)の木に登って避難した。 その後、母親が助けようとした時、子供が「お母さん、逃げて!(Madre huid)」と叫んだ。 コレが縮まって「Madrid」になったという説。現在は牛(闘牛)と熊(市章)の町。 小惑星 14967 番の名。
小惑星に日本の都市の名前も付けられている。濃尾、各務原周辺では 6720:Gifu , 4265:Kani , 17651:tajimi , 5775:Inuyama , 5908:Aichi, 5909:Nagoya など、残念ながら、まだKakamigaharaはない。

◆ 元素名にまつわる地名

Mgギリシャのマグネシア地方に因むマグネシウム Magnesium*/12
Scスカンジナビア半島と同じ語源のスカンジウム Scandium*/21
ヨウ化スカンジウムとしてナイター照明などのメタハラ(水銀灯の一種)に使われている。
Cu地中海キプロス島(Cyprus )に因む銅 Cuprum*/29
Gaフランスの古名ガリアに因むガリウム Gallium*/31
そのほとんどが半導体に使われているが、窒化ガリウムは青色発光ダイオードの材料。
Geドイツ国名に因むゲルマニウム Germanium/32
初期のトランジスターに使われていた(今はシリコン)。現在もダイオードなどに使用されている。
Srスコットランド西海岸にある寒村 Strontinan に因むストロンチウム Strontium*/38
塩化ストロンチウムは花火などの「赤」に使われている。
Yスウェーデンの小さな村 Ytterby に因むイットリウム yttrium/39
カラーテレビのブラウン管の赤色を出すために使用されている。
テルビウム terbium/65
テルビウム合金としてプリンターの印字ヘッドや光磁気ディスクの材料として使われている。
エルビウム erbium/68
ガラスできれいなピンク色を出すための着色剤に使われている。
Tb
Er
Ruロシア西部のルテニア地方に因むルテニウム Ruthenium/44
これを触媒とした水素化技術の開発に野依教授のノーベル賞受賞がある。万年質のペン先。
Euヨーロッパに因むユウロピウム europium/63
発光挙動が赤、青、緑、黄と多色の発光デバイスとしての応用が期待されている。
Hoストックホルムのラテン名holmia が語源のホルミウム holmium/67
レアアースのなかでも希少で高価なため、実用研究開発が遅れている。
Reドイツのライン河に因むレニウム rhenium/75
僅かな量で耐熱、耐震が向上することからジェットエンジンや自動車部品などの材料として利用拡大中。
Hfコペンハーゲンのラテン語名 Hafnia に因むハフニウム hafnium/72
原子炉の制御棒の材料に利用されている
Poポーランド Polska に因むポロニウム polonium/84
人工衛星用原子力電池の熱源として利用。同位体はラジウムの50倍の放射性。
Frフランスに因むフランシウム francium/87
実用的な用途が今のところない。
* ラテン語表記

◆ 印象に残った地名

私が欧州の地名に興味を持ったのは、フランクフルト(am Main & an derOder)と オックスフォードという独・英2都市名の語尾が同じ語源であることを知った事に始まる。 フランクフルトの「‐furt」とオックスフォードの「‐ford」は共に 「徒渉できる川の浅瀬」を意味している。前者は「フランク族が渡る徒渉地」であり、後者は「去勢牛が渡る徒渉地」を意味している。
【牛の呼び方】
牛肉やその乳製品を食することのない日本文化では、単一呼称の牛(または十二支の丑)で総称されていたが、 西欧では性別や飼育目的で呼称が異なる。
【性別・年齢】
  • Bull=オスの成牛のこと「牡牛」、「雄牛」
  • Cow=メスの成牛のこと「牝牛」、「雌牛」
  • Calf=未成熟な牛のこと「子牛」、「仔牛」
【性別・年齢】
  • Ox=去勢されたオスの牛「去勢牛」
  • Steer=去勢されたメスの牛「去勢牛」
  • Cattle=畜産用途に肥育されるウシ全般のこと「畜牛」、「畜産牛」
  • dairy Cattle=搾乳目的で飼育されるウシのこと「乳牛」
  • delivered Cow=すでに出産経験のあるメス牛のこと「経産牛」
  • Heifer=妊娠ないし出産を経験していないメス牛のこと「未経産牛」

シリア(Syria/シリア・アラブ共和国

今、多くの難民を出しているシリアは「東・日の出の地方」の意でアッシリア Assyria に由来。
地名語源/意味
アジア(Asia アッス(Assu)/アッシリア語で意味「日の出」
アナトリア(Anatolia)半島 アナトレ(Anatole)/ギリシャ語で意味「日の出」「東」
ヨーロッパ(Europa エレブ(Erebu)/アッシリア語で意味「日没」
欧州西端のアイルランドやイベリア半島もエレブから派生した地名。
レバノン(Lebanon ラバン(Erebu)/アラビア語で意味「白」
この地には冠雪し、石灰岩の白いレバノン山脈がある。

[レバノン山脈]
「中東写真情報」より


《古代メソポタミアにおけるアッシリア帝国の興亡》

アレッポ(Aleppo

シリア第 2 の都市アレッポはアラブ語の都市名ハレブ('ћalab)は「新鮮な乳」の意で、アブラハムが旅してきた旅人たちに牛乳を振舞ったとの伝承から来ている。 'ћaleb がイタリア語風に訛ったのがアレッポ。
古代にはハルペ(Khalpe)の名で知られた、聖書にも載る古い都市である。

モカ(Mocha)・ビブロス(Byblos

イエメンの紅海東岸に港町モカがある。地名の由来は不明だが、ここから積み出された酸味の強いアラビカコーヒーをモカコーヒーと呼んでいる。
又、地中海に面したフェニキア人の港町ビブロス*(ギリシャ語で「小高い丘」の意)があった。 古代エジプトからのパピルス(papyrus)はビブロスから船で各地にもたらされたので、ビブロスがバイブルやブックの語源となった。
*ビブロス:現在名はレバノンのジェバイル/(世界遺産)

【パピルスの製法】
茎の皮をむいたのち、内部の髄を薄片に切る。
薄片を平らな石の上に置いて二重に重ね、木槌で叩いて一枚のシートにする。

[製法のイメージと原料のカミガヤツリ]

キルギス(Kyrgyz

アジアのスイスとうたわれるキルギスタン(1991年独立)のキルギス(1993年国名変更)とは「ステップを渡る人」の意。 或いは、エネ・サイ川(キルギス語で「母の水」、ロシア語でイェニセイ Yenisei *)から来た 「40 人(kyr)の未婚女性(gyz)→40の部族」の意。
○○スタンはペルシャ語で○○国。
キルギス部族は
 漢代に堅昆けんこん鬲昆へきこん
 南北朝時代に結骨けつこつ居勿きょぶつ契骨けいこつ
 唐代に黠戞斯かつかつし
 元代に吉里吉思
として、紀元前2世紀頃より漢籍に記録されていた。
キルギスタンの南部は、大宛(フェルガナ)の一部であり、そこではアハルテケ種(汗血馬のモデル、サラブレッドの基盤種といわれる)という名馬を産出する。 前漢の武帝は、匈奴の騎馬軍団に対抗する為に汗血馬を得ようとして大宛へ張騫を派遣した。現在でも、フランスの競走馬がこの地で飼育されている。
*【イェニセイ川】
北極海に流れ込むロシア最大の水系で、世界で第5位の長さで流域面積はユーラシア大陸最大の河川。

ビシュケク(Bishkek

キルギスタンの首都名はビシュケクで、馬乳を作る時の攪拌道具名に由来する。
首都空港名はマナス空港で、マナス(Manas)という伝説の英雄名に由来する。

タシケント( Tashkent

《パキスタン(赤線が国境)》

キルギスタンの隣国ウズベキスタンの首都タシケントは「石の町」の意。
チュルク語で Tash は石、ペルシャ語で‐kent は町の意。 『後漢書』以来「石国」と呼ばれた。
中国人の胡姓(=西方由来の姓、石・康・米など)の内で、石氏の祖先はタシケントから来た人であると言われる。

パキスタン(Pakistan

パキスタンはウルドゥ−語で「清らかな国」の意。
 パンジャブ( Punjab)の P
 アフガン( Afghan)の A
 カシミール( Kashmir)の K
 イスラム教国家の I
 シンド( Kashmir)の S
 バルーチスタン( Baluchistan)の STAN
を全部合わせて「PAKISTAN」。この合成地名を考えたのは、英国に留学していたパキスタンの学生。

ノモンハン(モンゴル語では「ノムンハン」)

中蒙国境のノモンハンという地名は、清朝・雍正 12 年(1734)、外蒙古と内蒙古との境界上に設置したオボ(祭礼場)の一つ 「ノモンハン・ブルド・オボ」(“ノモンハンの水の塚”の意)に由来。
このオボの付近には、ハルハの左翼前旗の始祖ペンバの孫の僧侶チョブドンが葬られている。 チョブドンは清朝よりチベット仏教の化身ラマの位階の一つノモンハンという位を授かっており、オボの名称中のノモンハンとは、このチョブドンを指す。 ノモンハンという化身ラマの位は、モンゴルにおいて展開された転生活仏の位のうち、ホトクトに次ぐものである。 又、ノモンハンとは“Erleg”の別名でもある。蒙古語の Erlegは、ラマ教でいうヤマンタカ(大威徳明王)のことで、 “文殊菩薩の化身”である為、威圧的な姿から悪魔を祓う功徳と共に、知恵を授かる功徳があるとされる。 従って、「ノモンハン事件」の敗戦理由は、聖地を蹂躙した関東軍が仏罰を受けたものと考えている。

バンコク(Bangkok

タイ国の首都バンコクの儀式的正式名称は、下記のように160文字以上と長いため、略して最初の部分のクルンテプ(「天使の都」の意)と 地元では呼ばれている。
日本語や英語で慣用的に使われている「バンコク」は、チャオプラヤ川を挟んでバンコク中心部の対岸側の郊外の村バーンコーク (アムラタマゴノキ(ウルシ科の樹木)の茂る水辺の村の意)が訛って広まり定着したと云われている。
《世界で長い長い地名》

『クルンテプ』(166文字)/タイ・バンコク

KrungthepmahanakhonAmonrattanakosinMahadilokphopNoPpharatratchathaniburiromudomratchaniwetmahasathanAmonphimanawatansathitSakkathatiyawitsanukamprasit

『タウマタ』(92文字)/ニュージーランド

Tetaumatawhakatangihangakoauaotamateaurehaeaturipukapihimaungahoronukupokaiwhenuaakitanarahu
世界一長い地名としてこの名前でギネスブックに記載されている。

『ランヴァイル』(58文字)/イギリス・ウェールズ

Llanfairpwllgwyngyllgogerychwyrndrobwllllantysiliogogogoch
世界で最も長い駅名として知られている。
お天気キャスターが、略さず、さらりと言ってのける動画が話題になった。

『チャウバナガンガマウグ湖』(45文字)/アメリカ・ウェブスター

Chargoggagoggmanchauggagoggchaubunagungamaugg

クアラ・ルンプール(Kuala Lumpur

タイの隣国マレーシアの首都クアラ・ルンプールは「泥で濁った川が合流する場所の町」の意。
マレーシアにはクアラ(河口)の他にコタ(町)、バハル(新しい)、タンジュン(岬)、ブキッ(丘)バトゥ(石)、パシル(砂)等の付く地名が多い。
名古屋市名東区の「星が丘」はマレー語でブキッ・ビンタン(星)と言える。


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