災害立国日本/災害地名の実情
(岐阜県地名文化研究会副会長)三澤 博敬
このページは、本講演の資料を参考に、当編集部が独自に作成したものです。
◆我が国における主な自然災害
@土砂崩れ・地すべり等の土砂災害
【主要河川の勾配(国土交通省・北陸地方整備局より)】
信濃川や利根川などは、日本ではゆったりと流れる大河の代表ですが、
これら日本の大河川も、世界の大河と比較すればいかに短く、急な流れであるかがよく分かります。
我が国は山国であり、「山地・急傾斜地」が多い。
急傾斜地危険渓流付近にも、可住人口が集積している。
A高潮災害
周りを海に囲まれており、台風等の異常潮位による被災。
B冬季の風浪災害
海洋国であり、強い季節風の影響を受け易い。(特に日本海側)
C海岸浸食
風浪・波浪による侵食や、陸域における土砂流出防止対策工事やダム建設に伴う土砂流出の減少。
D台風災害
海水温が高い南方海洋で発生した台風の進路に当たりやすい。

{データは「気象庁/台風の統計資料」より)
E地震災害
世界的にみて地震多発国である。
【日本付近で発生する地震(「地震気象庁/地震のしくみ」より)】
F津波被害
南海トラフ地震による大災害の発生が懸念される。
【日本付近のプレートの模式図(「地震気象庁/地震のしくみ」より)】
G液状化災害
地震の際に、沖積平野における地下水位の高い砂地盤が振動により液体状になる。
地中において比重の小さい地下水や砂などが噴出(容積の減少)し、比重の高い建造物が沈下、倒壊する。
H河川の氾濫災害
降雨量の多いモンスーン地帯。
古来より氾濫の災害を少なくするために霞堤(かすみてい)や越流堤(えつりゅうてい)などの工夫がなされてきた。

霞堤は、堤防のある区間に開口部を設け、上流側の堤防と下流側の堤防が、二重になるようにした不連続な堤防のことです。
洪水時には開口部から水が逆流して堤内地に湛水し、下流に流れる洪水の流量を減少さます。
現代では、頑強な堤防や堰の建設によって霞堤は少なくなった。

越流堤は、堤防の一部分を低くして洪水が越流堤の高さを超えた時、洪水の一部が越流堤を越えて遊水地に流れ込みます。
【メモ】堤を切って設置したのが水門で、堤の中に埋め込んだものが樋門(四角)・樋管(丸)
I地盤沈下
濃尾平野のゼロメートル地帯では、地下水の汲み上げによる地盤沈下よって浸水危険度が増加する。
地下水の汲み上げ規制が、中小の工場などに対して十分に監視できない現状がある。
J火山災害
噴火による岩屑雪崩(がんせつなだれ)、火砕流、降灰、火災等の発生。
【関東・中部地方の活火山(「気象庁/火山」より)】
写真上:白山全景(北東側上空から 2007年9月18日気象庁撮影)
写真下:御嶽山遠景(北東側から2001年6月4日気象庁撮影)
K豪雪被害
建物の崩壊、地域の孤立化、除雪による転落
◆災害地名
大池町/旧本荘村大池
江戸期の文化犬洪水で長良川が決壊してできた大池が由来。池は明治末まで残っていた。
日置江(ひきえ)/岐阜市(旧柳津町)
低い土地で川(西に長良川、南に境川、東に大江川、北に荒田川)が集まってくる「引き江」の意。
尻毛(しっけ)/岐阜市
付近は、伊自良川の氾濫源であり、「しっけ」は湿地の意味。
芥見(あくたみ)/旧稲葉郡芥見村
長良川、武儀川、津保川が合流し、、氾濫によるアクタミ(飽田水)に由来
▼その他の災害関連の漢字
(但し、他の由来もあるので、すべてがこれらの意味とは限らない)
漢字 | 読み | 意味・由来 |
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俣 | また | 河川の合流地点を意味する。 |
柿 | かき | 「欠く」と同じで、土地が欠けやすいことから地すべりや土砂崩れがあった場所に多い。 |
金 | かね | 地滑りを意味する古語で、急傾斜地で、礫の堆積地。 |
猿 | さる | サルは古代語のザレ(礫)の転語で、山崩れで、岩が崩れる所。 |
鴨 | かも | 「カマ」から転じて、えぐり取られた地形や低湿地の浸水地名。 |
倉 | くら | 「くら」は「崩れる」という意味から、崖、谷などに多い地名。 |
梨 | なし | 古語の「ナシル」が訛って転じたもの。山間部の緩傾斜地に多く、地下水位が高く、地すべりをおこしやすい。 |
蛇 | じゃ | 水の流れや土石流が流れる様子を、蛇がのた打ち回る様子に例えたもので、土砂の流出や堆積地に多い。 |
白 | しろ | まっさらになるという意味。洪水による土砂で埋まった土地。 |
牛 | うし | 古語の「憂し」から、不安定な土地。 |
新田 | にった | 「ニタ」で、料理の「ヌタ」と同じ意味で「じとじとしている湿地や沢」を指す。 |
海老 | かいろう | 海老のように川などが曲がりくねった状態を表す。 |
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