Culture

UpDate/2018/3/27


日本ペドロジー学会が各務原市を巡検
可児 幸彦

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日本ペドロジー学会

 ペドロジーとは土壌学の一分野です。 日本ペドロジー学会は、生命の基盤である土壌がどのようにして生成し変化していくのか、 そして多様な土壌をどう分類し利用していくのかについて研究、議論し、社会に発信する学会です。 2018年で、創立61年となります。 農学、環境学、生態学、自然科学研究では、「土壌」を非常に重要な環境条件と考えています。 国連総会でも、適切な土壌管理が各国の持続的発展に不可欠であり、 その必要性の社会的認知を高めることが喫緊の課題であると認識されています。

2018年度大会

 今年の3月1日〜4日、名城大学にて日本ペドロジー学会2018年度大会、第57回公開シンポジウム、 第64回野外巡検が行われました。 大会では、名城大学農学部の村野宏達准教授により「土壌有機物の環境科学的側面・土壌吸着の果たす役割」など が発表されました。 シンポジウムは、「土壌の有機物について考える」がテーマでした。 古くから表土の流出が土壌の肥沃度の低下と関連付けられています。 土壌中には植物遺体,腐植物質,炭化物が含まれています。 シンポジウムでは、土壌の有機物の存在について様々な角度からの研究成果が発表され、質疑応答が繰り広げられました。

写真-1 木曽川泥流堆積物(鵜沼西町)

写真-2 切通し断面(鵜沼大伊木町)

写真-3 切通し断面(鵜沼大伊木町)

写真-4 オレンジ軽石(鵜沼大伊木町)

各務原台地の主体を成す砂層の中には御嶽山から噴出したオレンジ軽石を何層にも多量に含まれています。 このオレンジ軽石は、御岳第三浮石層(Pm-III)と呼ばれるもので、6.6〜6.8 万年前のものと測定されています。

写真-5 砂利採取工事現場(鵜沼真名越町町)

写真-6 ニンジン畑(鵜沼各務原町)

野外巡検

 3月3日〜4日は、参加希望者を募り一泊二日でバスによる野外巡検が行われました。 巡検参加者は、村野先生をはじめとする総勢41名。 群馬県から九州に及ぶ広範囲の大学、農林水産省、農業試験場、研究所などから研究者が参加しました。 巡検のテーマは、「東海三県の黒ボク土」です。
 黒ボクとは、火山性堆積物が有機土壌化した真っ黒な土です。 巡検コースのなかに、各務原台地の黒ボクが選ばれました。 そこで、私もバスに同乗して参加者を案内することになりました。 8時に名古屋駅新幹線口集合、午前は三重県鈴鹿市広瀬を巡検し、午後は各務原市の鵜沼地域を巡検しました。
 私の同乗は初日のみでしたが、翌日は愛知県新城市を訪れるということでした。

各務原台地の黒ボク土を案内

 各務原市では、まず鵜沼西町の木曽川泥流堆積物を観察(写真-1)。 その硬さと堆積の厚さに関心が寄せられました。
 次に伊木山西側の切通し断面で各務原台地の内部を観察(写真-2、3)。 御嶽から運ばれてきた数万年前のオレンジ軽石(写真-4)に注目が集まりました。
 そして鵜沼真名越町の砂利採取工事現場へ向かい、許可をもらって中へ入り土層断面を観察(写真-5)。
 実は、11月13日に先行して、この場所で土壌のサンプルが採取されましたので*2)、同じ場所にて分析結果が披露されました。
 最後に、鵜沼各務原町のニンジン畑へ行きました。 予め許可を得た畑に観光バスを横付けし、41名が降車。先行部隊が掘った深さ1.5mの穴を囲んで、黒ボクと赤土の断面観察会が始まりました(写真-6)。 参加者は、順に並んで断面を撮影し、農業環境変動研究センターの大倉先生から土の色の見分け方や特徴について説明が始まると、熱心に耳を傾けました。 土の話は、何時間たっても尽きないようでしたが、所定の時間が近づいたので丁寧に埋め戻しを行い、その場所を離れました。
 今回の日本ペドロジー学会巡検に同行して、若い学生も男女を問わず土に夢中になっていることに少々驚きました。 私が感じたことは、土壌の研究も奥が深く、とても面白いということです。各務原台地の黒ボクは、全国的にも有名です。 黒ボクのことを、もっと研究して、その魅力を発信していきたいと思います。


写真-7

写真-8

黒ボク土の土壌モノリス採取

(2017/11/13)

土壌モノリスとは、土壌断面をそのままの状態で採取した標本のことです。
  1. 断面を均一に削る。
  2. 均した断面に接着剤を塗布して、しみ込ませます。(写真-7)
  3. その上にシートを貼り付けます。
  4. シートの上から再度接着剤を塗布します。(写真-8)
  5. 接着剤の硬化を待ちます(30〜60分)。
  6. 慎重にシートをはがしていきます。(写真-9)
はがされたシートの裏面には土壌の自然な形状が採取されます。
そこには、表面からは分からない断面の凹凸や皺が観察でき、長い年月をかけて流動的に形成された土壌の歴史を見ることができます(写真-10)。
つくば市の土壌モノリス館に展示されるそうです。

写真-10

写真-9





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